【トレンド】ホテルはもう古い?ホテルマンが解説。分散型ホテルのメリット・デメリット
こんにちは!
最近ホテルやホステルに泊まりすぎて、友人から「奥さんから追い出されたの?」と言われてしまった@KaZuOka0412です。
1. 分散型ホテルとは
分散型ホテルとは、文字通り「宿がその地域に散らばる」状態で運営しているホテルのことを指します。
分散型ホテルは、イタリアのアルベルゴ・ディフーゾ(Albergo Diffuso)という取り組みがモデルになっている。地域ぐるみで観光客をもてなすという発想は、アルベルゴ・ディフーゾから受け継がれたものだ。1976年にイタリア北部で大地震が発生した後、住人が町を離れて空き家になった場所を有効活用するために考え出された。
下の図を見てもらうと少し分かりやすいと思います。宿が分散していますが、フロントは1箇所しかありません。町を一つの宿としていることが多いので、お風呂は近くの銭湯だったり、朝食は隣のカフェで食べるなど、本来ホテルの中で完結することが、町全体を通して完結する仕組みとなっていることが多いです。
また、日本まちやど協会というサイトは、日本全国にある分散型ホテルを検索できます。町ぐるみでゲストをもてなすことで、その地域を盛り上げていくことを目的とした宿が見つかります。その地域に根ざしているホテルやゲストハウスに泊まりたい人は、ぜひチェックして見てください!
2. 日本の分散型ホテルの事例
◯ Hanare (東京・谷中)
「まち全体をひとつのホテルに見立てる」
とてもシンプルなコンセプトで、この一文でどんなホテルかわかります。東京の谷中は、下町風情が残っていて、最近流行りの「路地」にはおしゃれなカフェや民家が残る雰囲気良い感じのエリアです。雑貨屋などもあり、東京の忙しさに疲れた時にちょっと休みにふらっと泊まりに行けるホテルです。
文字通り、町ひとつで宿が完結する仕組みになっています。散策用の自転車は、近所のレンタル自転車屋、お風呂は近所の銭湯、夕食や朝食は近所のレストラン。谷中を堪能したい方には、最高のホテルとなっています。
◯ ENSO ANGO (京都・四条)
「町にとけこみ、地域の文化と日常に触れる旅」
ENSO ANGOは、京都・四条に5つのホテルを構えています。5棟それぞれが独特のデザイン、特徴、機能があるので、どれも魅力的です。ここの良いところは、それぞれの棟は徒歩で回れる距離で、いずれの棟でもチェックインができ、格棟の施設を自由に利用できる点です。文化体験などもできるので、京都を味わいたい方にはとてもおすすめです。
◯ Sekai Hotel (大阪)
『私たちの「日常は」誰かにとっての「非日常」である』
Sekai Hotelは、大阪の西九条、布施にあり、フロントを一か所にまとめて街全体を巻き込んで運営をしているホテルです。特にSekai Hotelは、空き家再利用をしながら、街全体を大きなホテルと見立てて開発を進める組織です。
特に面白いのが、Sekai Hotelに泊まるともらえる「Sekai Pass」というものがあります。このカードがあれば、ホテル周辺の提携したお店で特典を受けることができます。街を散策する際のヒントにもなるので、この仕組みは個人的にもぜひマネしたいところです。
◯ 矢掛屋 (岡山・矢掛町)
「いらっしゃいませ、じゃなくて、お帰りなさいの宿」
HPを開くと目に飛び込んでくることば。すごくキャッチーで、コンセプトが伝わってきます。矢掛屋は、2018年6月にイタリアの「アルベルゴ・ディフーゾ協会」から、分散型ホテルとして国内初の認定を受けた、日本の元祖分散型ホテルと言われています。
また、矢掛屋の開業を発端に「分散型ホテル」を推進する国内組織を岡山商工会議所に置き、分散型ホテルを広める取り組みがスタートしていたりします。岡山県は、特に注目ですね。
◯ HOTEL 溝 (滋賀・大津)
「Stay Funding」
「ステイファンディング」という、滞在することで街を活性化に貢献する新しい旅の形で、HOTEL溝は滋賀の大津で一棟貸しホテルを展開しています。どれもデザイン力が高く、丁寧な宿泊ができるホテルになっています。商店街の中にあるホテルなので、その街をそのまま体験できることが魅力の一つです。
◯ NIPPONIA (全国各地)
「土地に、歴史にとけこむように泊まる」
NIPPONIAは、全国に全体している空き家(=古民家)をリノベーションして、その地域の歴史を尊重しながら、客室や飲食店をオープンし、複合施設としてその地域を再生していく取り組みを行っている組織です。宿泊施設は、明治時代や昭和時代に建てられたような築100年以上のものまであります。
3. 分散型ホテルに泊まるメリット(消費者向け)
- その町の魅力をゆったり楽しむことができる
- 人との繋がりを強く感じることができる
- 唯一無二の体験ができる
4. 分散型ホテルを運営するメリット(業界人向け)
- 売上が上がる
- 無駄なコストを減らせる
- 町に溶け込める
また、町全体を考えたビジネスモデルでもあるので、その地域に人を集める方法としては、分散型ホテルはとてもインパクトのある存在になり得ると思います。
このビジネスモデルは、ホテルだけが儲けるのではなく、町全体が儲かることに気づく。宿泊客が増えれば、町の定食屋が儲かり、飲み屋さんが儲かり、レンタサイクル屋が儲かり、お土産屋が儲かる。以前の半数(5軒)になってしまった銭湯を盛り上げることにもつながる。- JB Press
5. 分散型ホテルに泊まるデメリット(消費者向け)
- ホテルだけで完結しないので、移動が面倒
- 交通の便があまりよくない(こともある)
- ホテルと思って泊まるとがっかりするかも
6. 分散型ホテルを運営するデメリット(業界人向け)
- 初期投資がかかる
- 運営管理のノウハウ構築に時間が必要
- ゲストとの距離感コントロールが簡単ではない
7. 地方創生の後押しになる?
皆さんご存知の通り、日本は人口が減少し続けていて、2050年には1億人を切るという予測があります。人口が減っていくと、家>人という状態が進んでいきます。口野村総合研究所の報告では、2033年には空き家の数が2千万戸を超えるというデータがあります。
野村総合研究所(NRI)は6月7日、2033年の総住宅数は6063万戸(2013年時点)から約7130万戸に増え、空き家数は約820万戸から約2170万戸に倍増するという推計を発表した。空き家率は13.5%から30.4%に上昇する。
また、日本は文化的にも新築を好む傾向がとても強いので、中古物件が売れ残る傾向にあります。ただ、最近になって中古物件をベーションして自分好みにする流れも生まれてきていますが、大多数が新築を好む傾向にあります。この流れを少しでも緩める必要が国としても必要だと強く感じます。
少子高齢化社会が進行する中、空き家問題の深刻度が増している。平成25年における空き家は全国で820万戸に上り、空き家率は実に13.5%となっている。- JB Press
上記図の通り空き家率の減少を止めることは、非常に難しいということがはっきりわかります。ここで空き家の解決策の一つとして、今回のテーマでもある分散型ホテルが役に立つ、ということが言われています。
「訪日観光客の増加」と「空き家の増加」。ここをうまくマッチングしていけば、その地域に訪日客が訪れるようになり、空き家が活用され、かつその地域にお金が落ちる、という好循環になります。が、「言うは易く行うは難し」です。
分散型ホテルは、全国的に広まってきており、協力的な自治体も増えている傾向にあるため、地方創生を解決する一つの施策として推奨している自治体も少なくはありません。都内では、毎月のように新築のホテルが建つ話を聞きます。新築ばかり建てるのではなく、古いものを再利用する流れがもっと来るといいですね。
9. 僕のお気に入りのホテル関連本
僕は大まかに分けると「デザイン力に優れたホテル・ホステル」と「交流が盛んでコミュニティー力の強いホテル・ホステル」にアンテナがビンビンに反応します。
今回は、前者の「デザイン力に優れたホテル・ホステル」がたくさん読める本・雑誌を紹介したいと思います。興味ある方は、ぜひどうぞー!
本の名前の通り、実測してます!(笑) 海外50都市、200以上のデザインホテルを訪れた著者が41のホテルを厳選して、設計図をスケッチしています。デザインや設計のポイントが詳細に書かれている、かなりホテルマニア向けの本です。(笑)
業界では有名なデザイン本です。ホテルだけでなく、カフェやワーキングスペースが併設しているホステルやゲストの紹介本で、これから宿泊施設をやりたい人にもおすすめの本です。写真も1ページ1ページ大きめなので、目の保養になります。(笑)
この本は、発売日が2019年7月なので比較的新しいホテル、ホステル、ゲストハウスの特集です。小・中規模の施設で、「デザイン」というキーワードで67施設の紹介しています。最近のトレンドを押さえたい人にはおすすめです。
これは本ではないですが、世界中のデザイン力に優れたデザインホテル320以上を掲載している海外のオリジナルサイトです。サイトのデザイン力も高いので、見ていて飽きません。昼休憩などに見ていたら、ご飯食べるの忘れます(笑)
これからどんな新しい分散型ホテルができるかとても楽しみですね!
地方に旅行するときは、ぜひ検討して見てくださいねー!
それでは、以上です!